Cosmic Consulting
マッシュアップトーク
“チームプレイ”というキーワードを軸に、組織コンサルタントの波上こずみがビーチサッカーチーム『ソーマプライア』のコーチである河原塚毅氏と対談を行なった。
人材派遣会社でマネジメント業務に携わっていたMをファシリーテーターとして、二人の話をまとめていくことにする。
スポーツとビジネス。“より良いチームを作る”という目的は共通している。良いチームの定義とは何なのか。
チームの成長と自己実現を両立させるためにはどうすればいいのか。チームに所属するメンバーが活き活きと働くために、上司にできることとは。
個人でも実現できる働き方改革を突き詰めていこう。
河原塚毅(カワハラヅカ タケシ)
ソーマプライア沖縄代表
元ビーチサッカー日本代表
ビーチサッカーの選手時代には、日本代表キャプテンとして、W杯(ワールドカップ)に6大会出場。チームとしては、沖縄をホームタウンとして活動するソーマプライアを3度日本一に導く。
波上こずみ(kozumi naminoue)
Cosmic Consulting代表
組織コンサルタント
那覇市首里出身。2016年Cosmmic Consulting創立。【働く人の生き生きを組織の活力へ】をビジョンとし、県内各地で、人材定着、人材育成プログラム構築や働き方改革コンサルティングなど、組織活性コンサルティングを行っており、のべ80社以上のコンサルティング実績を持つ。
* * *
―お二人はもともとお知り合いなんですよね?
組織って大きくなればなればなるほど中にいる一人一人が見えにくくなるけど、
チームの中にはいろんな人がいて、それぞれの強みを掛け合わせた方が力を発揮できると思っていて。
ビジネスとスポーツは違うフィールドかもしれないけど、きっと共通する部分があるかもしれないと思って、このような機会をセッティングさせてもらいました。
―いきなり本題ですが、今まで関わったビーチサッカーのプレーヤーの中で“こいつは成長する”と思う人の共通点はありますか?
人の話が聞けるのは、そのプレーヤーの志が高く、向上心があるからです。僕のコーチとしての役割はそのプレーヤーのできていないことを気づかせることにあります。
プレーに対する想いが強ければ強い分、コーチからの評価が低かったら、きっと抵抗を感じちゃうだろうし。
それを超えられた人が、伸びる人だと思う。僕はそのハードルだけを用意している感じです。
―ハードルを越えるのは、あくまでも相手の課題である、と。
チーム内の競争もありますからね。例えばサッカーは11人でやりますが、1対11でではなく、味方も含めての1対21の世界。
―確かに。まず試合に出るためにチームメイトに勝たなければいけませんからね。
試合にそんなに入れない位置だったんで、ピッチの外からチームメイトを素直に応援できない自分がいる。それはすごい葛藤があって、メンタルがきつい部分があった。
試合に出られないし、チームも応援もできない大変な世界を経験した。上に行けば行くほど、そういう世界になってきて、サッカーを楽しむって言っていられない世界になるので、
子どもたちにはサッカーを好きになってほしい思いがある。
たしかに、子どもたちに結果だけを求めていませんでしたからね。競争させて「うまくなれ!」なんて、たけコーチは言いませんでしたから。
だから時々、たけコーチのチームにいたみんなとサッカーしたら、すごい楽しそうなんですよね。好きにプレーできる!って。
そこが僕のスクールの強みだと思っています。
―結果を求めないところが強みって、なんかイイなぁ。
―逆にプロのチームでは結果が第一だと思うのですが、プレーヤーの中でも、結果を求めるとテンションが下がる選手はいますか?
そこは絶対に譲れない条件なんですが、一方で結果をコントロールできない難しさも感じています。
―“結果はコントロールできない”とは、どういうことでしょうか?
確かに。
その準備のところが大切なんです。試合に向けたプロセスの中で、どれぐらいいい準備ができるのか。日々のトレーニングの中で何を感じて、
どうやって成長していくのかというプロセスが大切です。
―プロセスがいい感触だと、結果もついてくる?
結果がどうでもいいわけではないのですが、それよりも大事なのはそれまでのプロセスです。そしてプロセスを支えるのが理念なんです。
―理念。ちなみにソーマプライアの理念ってどんなものなんでしょうか。
世界一になるというのではなく、世界一を目指すことです。
もし世界一になっても、そのプロセスはずっと続いていくわけで、
そうなればビーチサッカーをずっと続けられるなと思っている。
そもそも私たちの組織の理念ってなんだっけ?と結構従業員に伝わってないことが多いんですよ。
だから目の前の仕事に必死で、自分の仕事って何のためにやっているのかが分からなくなっている。
仕事の理念が浸透している組織と、してない組織では出てくる結果がぜんぜん違います。
―スポーツもビジネスも、最終的なゴールは“より良い結果”だけど、まずは組織の理念に基づくプロセスを大切にするべきってことですね。
毎日の業務が忙しいと理念って忘れちゃいそうですね。それを日々伝えていくのが上司の役割なんでしょうか。
「印鑑はここに押して」とか。それが何で必要な作業なのかを教えるやり方をしない。そうすると“業務を覚えれば仕事ができる”ってなってしまうんです。
人が育つシーンというのは、この作業が何で必要なのかを理解すること。先輩も新入社員から「これって何で必要なんですか?」
聞かれたら答えられるようにならないといけないと思います。先輩も理由が分からない場合は、「社長に聞いてみるね」と言える空気感が大事。
―その仕事が何に繋がっているのかを考えるって大切ですね。
日々の業務を一つ一つ考えてやっているかどうか。その業務の先が見えてるかどうか。
―その先、自分の仕事が理念に繋がっているかどうかってことですね。
―ソーマプライアに関わる人たちと感動を味わうんだ!と思えれば、もう一本、ダッシュ頑張れそうですもんね(笑)
―試合に出るメンバーを選ぶのもコーチの役割だと思うのですが、たけコーチのメンバー選びの基準はありますか?
―というのは?
まず自分がどう動くか。どこに動けばパスをもらえるのか。そして味方の状況を見ますよね。味方はパスを出せる状況なのか。
極端な話、味方が背中を向けていたらパスなんかもらえっこないですよね。自分と味方の動きには考えが及ぶんです。
さっき、考えるべきことは3つあるって言いましたよね?まず自分。そして味方。そしてさらに考えなきゃいけないのが敵チームのこと。
自分と対峙する相手の動きなんですが、これを考えられない選手が多い。ビジネスでいうと、相手は“お客さん”にあたるかもしれない。
相手(お客さん)の姿が見えてないことがすごい多い。相手(お客さん)がどう動くかということを想定して、自分が逆算して動く。
相手のことをを考えずに自分たちが先に動いてしまうことが多いと感じてます。
―おれたちは強い!おれたちのプレーをすれば負けないって感じでしょうか。
日本人は海外の選手に体格で勝てない。一人一人の個人のポテンシャルで考えたら、まず勝てないんですよ。
そんな強い相手に対しては、相手を見て、相手の弱点を見て戦略を立てる。
―自己肯定と、弱者の兵法をどう両立させるかってことですね。うーん。難しそう。
コーチとして、選手に“相手(お客さん)を見る視点”を持たせるために工夫されてることはありますか
Aのチームが試合で負けたしましょう。次の週にも同じメンバーで試合をするのですが、Aだけメンバーから外すんです。
―Aさん以外は前の週と同じメンバーで試合をする、と。
先週は負けたのに、自分が外れて、試合に勝った。なぜだ!って。
それくらいのことをやって這い上がってこれないとプロの世界では通用しない。ぼくらが目指しているのは世界一なので。
―ありきたりな言葉ですけど、スポーツの世界って厳しいですね…。
次回は世界を目指す河原塚氏が実践している選手へのコーチングについて語ってもらいます。波上が見てきた“葛藤する世代”についても言及し、それぞれの想いをぶつけ合いました。